簿記2級は経理の転職で有利？取得メリットと成功の秘訣

転職市場で安定した評価を得られる資格のひとつが簿記2級です。

特に経理職を目指す方にとって、簿記2級は会計や財務の基本スキルを証明するだけでなく、多くの職種や業界で高く評価される強力な武器となるはずです。

本記事では、簿記2級が経理の転職で有利にはたらく理由と活かせる職種や業界、応募書類や面接でのアピール方法を解説します。

簿記2級にプラスすると評価が一層高まる資格についても紹介するので、資格を活かした理想のキャリアを実現するための参考にしてください。

簿記2級が経理の転職で有利になる理由

簿記2級は、経理の転職において価値を高めるためのスキルのひとつとなり得ます。

取得することで、キャリアの選択肢を広げ、希望する職種や業界への道を切り開くことが可能です。

基礎的かつ実用的な会計知識を証明できる

簿記2級は、財務諸表の作成や読み取り、複式簿記のしくみを理解する基礎的な力を証明する資格です。

この知識は日々の経理業務だけでなく、企業全体の財務状況を把握し、戦略的な意思決定を支える役割にも直結します。

財務諸表や損益計算書を理解する力は、経営層や他部署とのコミュニケーションや提案の場面でも大きな武器となるはずです。

経理求人で簿記2級以上が応募条件のケースが多い

簿記2級以上の資格、または同等の知識を応募条件として挙げている求人は少なくありません。

そのため、転職活動の際に簿記2級を取得しておくと応募できる求人が増え、選択肢が広がります。

特に経理職や財務職では、応募資格として簿記2級を必須条件とする企業が多数あります。

また、必須条件に含まれていなくても、資格をもっていることでほかの応募者と差別化を図ることができます。

簿記2級を活かせる職種や業界

簿記2級を取得すると、経理以外にもさまざまな業界や職種でその知識を活かすことができます。

以下では、簿記2級を活かせる転職先である職種や業界について解説します。

事業会社の経理・財務

特に活用しやすいのが、事業会社の経理・財務部門です。

• 仕訳処理：取引にもとづく仕訳や伝票作成をおこない、正確な会計データを記録します。
• 月次・年次決算：試算表をもとに損益計算書や貸借対照表を作成し、決算業務をサポートします。
• キャッシュフロー管理：資金繰りを見ながら必要な資金調達や支払い計画を立てます。

簿記2級をもっていれば、これらの業務をスムーズに進めることができ、経理・財務部門での信頼度が高まります。

事業会社の経営企画・事業企画

経営企画や事業企画部門では、財務データをもとに経営方針や戦略を策定する業務があります。

簿記2級の知識があれば事業計画書や予算の作成をスムーズにおこなえます。

• 予算管理：過去の決算データや財務情報をもとに予算案の作成や進捗の管理をおこないます。
• KPI分析：経営指標をもとに事業のパフォーマンスを分析し、経営陣に適切な報告をおこないます。
• 事業戦略の立案：数字にもとづいた事業計画や施策を立案し、実行に移すためのプロセスを整えます。

経営企画の業務では簿記2級の学習で得た会計知識がデータ分析能力を高め、企業全体の戦略を数字で裏付けることが可能です。

会計事務所・税理士事務所

会計事務所や税理士事務所の主な業務が、クライアントの経理業務や税務申告のサポートです。

• 記帳代行：クライアントから提供された資料をもとに仕訳処理や帳簿作成をおこないます。
• 決算書作成：損益計算書や貸借対照表を作成し、税務申告のために必要な資料を準備します。
• 税務申告：法人税や消費税、所得税などの税務申告書の作成を代行します。

簿記2級は会計・税務に関する基礎的な知識をカバーしているため、これらの業務で強みを発揮できます。

金融業界

銀行や証券会社といった金融業界では数字や財務に関する知識が求められます。

簿記2級の学習を通じて金融商品の理解や財務分析における土台を築くことが可能です。

• 融資業務：企業への融資をおこなう際、貸出先の財務状況を分析してリスクを評価するために簿記の知識を活用できます。
• 投資業務：投資先企業の財務諸表を分析し、投資判断をおこないます。

簿記2級は金融業界の業務において財務分析や報告書作成の基盤となり、実務能力を高めるための基礎力を養えます。

コンサルティング業界

コンサルティング業界では、特に数字やデータをもとにした経営改善の提案やアドバイスをおこなう際に有効です。

• 経営改善コンサルティング：クライアントの財務データを分析し、コスト削減や収益向上のための提案をおこないます。
• M&Aアドバイザリー：企業の買収や合併における財務デューデリジェンスを実施し、財務面でのリスクを評価します。

コンサルティング業界では、簿記2級の知識をベースに数字を使った戦略立案や提案が可能です。

簿記2級を活かせる経理の求人例

簿記2級を保有していることで応募条件を満たせる求人は多数あります。以下は弊社求人の例です。

デザイン会社

• 職種：【管理部】経理財務（ミドルメンバー）
• 想定年収：500万円～650万円
• 必須経験：日商簿記2級／事業会社での経理実務のご経験5年以上

大手家電メーカー

• 職種：本社経理（経理・財務本部）
• 想定年収：500万円～950万円
• 必須経験：メーカー、商社、 金融機関などでの経理業務の経験（決算、収支分析、資金管理、事業計画策定などの実務経験）／日商簿記2級の資格、または同程度の会計、財務知識

人材紹介大手

• 職種：経理マネージャー
• 想定年収：680万円～790万円
• 必須経験：日商簿記2級以上／年次決算業務のご経験がある方

簿記2級を応募書類に記載する際のポイント

簿記2級は、転職活動で作成する応募書類に記載できる資格です。

その際、ただ資格名を記載するだけでは効果的にアピールできないため、次のようなポイントにきを付けましょう。

取得日の記載

履歴書や職務経歴書の資格欄に記載する際、「日商簿記検定2級（取得年月：2024年11月）」のように、取得年月とあわせて記載しましょう。

取得したタイミングの背景を伝えられるように準備しておくと良いでしょう。

実務経験と紐づける

簿記2級は資格そのものだけでなく、実務経験と組み合わせてアピールすると、より強い印象を与えることができます。

職務経歴書の記載内容を工夫し、資格が実際の業務に役立っていることを具体的に示すことが大切です。

たとえば「経理担当として月次決算業務を担当し、簿記2級の知識を活用して正確かつ迅速に試算表の作成をおこないました」のように記載します。

資格＋実務経験をセットで示すことで、業務への適応力をアピールすることが可能です。

採用担当者にとっては、その知識を活用してどのような価値を生み出せるかが重要な判断材料です。

簿記2級を面接でアピールする方法

転職面接で簿記2級をアピールするには、実務経験や転職後の業務と絡めて伝えることが大切です。

取得理由と活用意欲を伝える

まず、なぜ簿記2級を取得したのか、その理由を面接官にしっかり伝えましょう。

特に、現在の業務やキャリアにおける課題、目標と結びつけて説明すると説得力が増します。

たとえば「業務に必要だと感じたから」などの理由だけでなく、「業務改善に役立てたい」「キャリアの選択肢を広げたい」といった前向きな動機を示すと効果的です。

また、資格の活用意欲についても触れることが大切です。学んだ知識をどのように業務で活かしていきたいのかを具体的に話すことで、前向きな姿勢を示せます。

税理士や簿記1級などの上位資格を目指している場合はその点も伝えることで、採用担当者に意欲的で成長志向のある人物との印象を与えられるでしょう。

エピソードを交えて実務経験を伝える

簿記2級を単に保有しているだけでなく、それをどのように実務で活用したかをエピソードを交えて話すことで具体性と説得力が増します。

たとえば、「月次決算の締め作業に時間がかかっていたため、簿記の知識を活かして作業フローを見直し、不要な手順を削減しましたした」などの具体的な経験を伝えましょう。

エピソードを話す際は、課題→取り組み→結果の順で説明すると、聞き手に伝わりやすいです。

応募先へ貢献する姿勢を強調する

面接では、応募先企業に対して自分がどのように貢献できるかを具体的に伝えることが重要です。

簿記2級の知識やスキルをどのように応募先で活かせるかを考え、具体例を交えて話しましょう。

たとえば、「財務諸表を読む力をつけて、月次決算のスピードアップに貢献したい」「経理業務の効率化を支援したい」といった目標を示します。

また、貢献姿勢を示す際には、企業のニーズを考慮することが重要です。

簿記2級を取得したあとに転職するタイミング

簿記2級を取得したあと、タイミングよく転職活動を始めることで、スムーズに希望するポジションに就ける可能性が高まります。

考えられるタイミングは、決算期後や年度替わりです。

決算期後には、繁忙期を終えた経理・財務部門で欠員補充や業務拡大のための採用がおこなわれるケースが増えます。

年度替わりは新年度の計画にもとづいた採用活動が本格化し、求人が増えやすい時期なので、チャンスが広がりやすいでしょう。

また、転職市場の状況は経済状況や業界のトレンドによっても大きく変動します。

たとえば、DX推進や経営改革が進む中で経理・財務の人材需要が高まっている時期には、積極的な採用がおこなわれます。

あるいは、会計基準が変更されたタイミングでは変更後の基準に関する専門知識をもつ人材が求められることがあります。

こうした市場動向を見て動き出すのも有効な方法です。

簿記2級の基本情報

ここで、日商簿記検定2級の基本情報として、試験概要や合格率などを確認しておきましょう。

試験の概要

日商簿記検定は、学歴や年齢などの受験資格がないため、誰でも受験できます。

3級を受けずにいきなり2級から受けることも可能です。

ただし、まったく簿記の知識がない状態から学習する場合は3級の内容から学習を始めるほうが基礎が身につき効率的です。

2級の試験科目は、商業簿記と工業簿記の2科目で、3級にはない工業簿記が加わることで、2級の難易度は大きく上がります。

試験時間は90分で、100点満点のうち70点以上をとることで合格できる絶対評価形式です。

参考：日本商工会議所

難易度、合格率

簿記2級の難易度はやや高い部類に入ります。直近2年の日商簿記2級の合格率は以下のとおりです。

• 167回（2024.6.9）：22.9％
• 166回（2024.2.25）：15.5％
• 165回（2023.11.19）：11.9％
• 164回（2023.6.11）：21.1％
• 163回（2023.2.26）：24.8％
• 162回（2022.11.20）：20.9％

参考：日本商工会議所|2級受験者データ（統一試験）

回によって差がありますが、おおむね10％〜25％で推移しています。

合格率が高い回でも25％程度、低い回では11％程度しか合格していないことから、決して簡単な試験ではないことがわかります。

簿記2級だけでは不十分？経理の転職で求められるスキル

簿記2級は転職で強力なアピールポイントですが、それだけでは不十分なケースも多々あります。

企業が求めるのは、簿記の知識を土台として業務を幅広く支えられるスキルです。

コミュニケーションスキル

業務を円滑にすすめるためには、コミュニケーションが欠かせません。

経理部門であれば営業部門からの情報収集や、監査法人とのやり取りなどが発生します。

この際、数字を正確に伝えるだけでなく、背景や目的をわかりやすく説明する能力が必要です。

また、問題解決が求められる場面では、相手の意図や課題を正確に汲み取り、適切な対応を提案する力が重要です。

コミュニケーションスキルは単なる伝達ではなく、相手との信頼関係を築きながら仕事を進める力として評価されます。

ITスキル

経理の業務は、近年ますますデジタル化が進んでいます。

会計ソフトや給与計算システムの操作スキルは、実務において必須です。

エクセルを活用したデータ処理や分析、社内システムの効率的な活用も求められます。

さらにDXが進む中、RPAの導入や活用に関する知識があると、業務効率化のリーダーとして活躍できる可能性が高まります。

こうしたスキルは、企業が競争力を高めるために非常に重視されています。

データ分析力

データをもとに、予算決定のサポートをおこなう役割を担うことが増えています。

たとえば、損益分析やキャッシュフローの把握、人事では従業員データをもとにした離職率の分析といった業務があります。

これらのデータを正確に分析し、経営陣や上司に対してわかりやすく説明できる力が求められます。

ただ数字を出すだけではなく、そのデータが示す課題や可能性を見抜き、具体的な提案をおこなうスキルが高く評価されるはずです。

課題解決力

日々発生する業務上の課題に対処する能力も不可欠です。

業務プロセスの見直しや法改正に伴う新しい制度への対応など、次々と現れる課題に対し、迅速かつ的確に解決策を導き出す力が求められます。

課題解決力は単なる対応力ではなく、課題の本質を見極め、長期的に効果を発揮する解決策を提示する力を指します。

課題を細分化して優先順位をつけたり、他部署と協力して実現可能な計画を立案したりする能力が必要です。

簿記2級以外におすすめの経理資格

簿記2級を取得すると会計の基礎的な知識がしっかり身につくため、より難易度の高い資格にもチャレンジできます。

会計領域の上位資格としては、以下がおすすめです。

• 日商簿記検定1級
  極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算の知識を習得できます。合格者は単なる実務担当者を超えて、経営管理や経営分析といった高度業務を担当できるレベルです。合格率は10％前後です。
• 税理士
  税務代理や税務相談などをおこなえる国家資格です。税理士事務所のほか、上場企業の経理や税務部門でのニーズもあります。合格率は例年20％前後ですが、11科目中5科目に合格する必要があるため、数年かけて合格する方が多い難易度の高い試験です。
• 公認会計士
  法定監査を実施できる日本で唯一の国家資格です。監査法人をはじめとして上場企業の経理やベンチャー企業のCFO、コンサルティングファームなどさまざまなキャリアを選択できます。短答式試験と論文式試験があり、最終合格率は例年7％前後と非常に難易度が高い試験です。

簿記2級と相性のよい資格

簿記2級はほかの資格と組み合わせることで評価をさらに高めることが可能です。特に相性がよいのは以下の資格です。

• TOEIC
  国際的な取引が増加する中で、英語力はどの業界でも評価されます。簿記2級とTOEICを組み合わせることで、英語での財務報告書や国際会計基準（IFRS）に対応できる人材としてアピール可能です。
• MOS（Microsoft Office Specialist）
  ExcelやWordのスキルが必須です。簿記2級で得た知識をもとにExcelを活用したデータ分析や財務管理が効率的におこなえます。
• 給与計算実務能力検定
  簿記2級で会計や仕訳の知識を得たあと、給与計算の実務スキルを身につけることで、人事労務分野にも対応できます。特に中小企業では経理と人事労務を兼任するケースも多いため高く評価されます。

まとめ

簿記2級は経理の転職において有効です。

取得することで、幅広い業界でのキャリアチャンスが広がります。

転職活動では簿記2級を活かした実務経験をアピールし、活用意欲を伝えましょう。